志望理由書の文字数が埋まらない、あるいは削れずオーバーしたままのとき、何から手をつければいいかを整理します。水増しではなく場面を足す方法と、削る優先順位を具体例つきで解説します。
文字数カウンターの数字を、何度も見返す時間がある。
指定は600字、いま画面に出ているのは380。
残り220字をどう埋めればいいのか、カーソルだけが点滅している。
「これ以上、何を書けばいいんだろう」
そう感じたとき、頭の中で起きているのは、書くことが無いという状態ではありません。
多くの場合、実際に起きているのは、場面がまだ1つも文章の中に入っていない、という状態です。
「学校の方針に共感した」「魅力を感じた」というような言葉だけを重ねても、意味のまとまりは増えず、文字数もなかなか伸びていきません。
伸ばそうとして言葉を足せば足すほど、内容はかえって薄くなっていきます。
抽象的な言葉は、便利なぶん短くまとまってしまう性質を持っています。
一文で言い切れてしまうからこそ、そこから先に膨らませようとしても、同じ内容を言い換えているだけになりやすいのです。
足りないのは書くことではなく、具体的な場面。
まずこの前提を置き直すところから、文字数の悩みは動き始めます。
この壁は、本人が自分で書いているときも、そばで手伝っているときも、同じ形でやってきます。
指定の8割まで来て、そこから先がどうしても伸びない。
そういうときほど、言葉を探すより先に、場面を探したほうが早く動き出します。
足りない文字数を埋めようとして、まずやってしまいがちなのが、同じ内容の言い換えです。
「魅力を感じました」を「大変魅力的に感じました」にし、「共感しました」を「深く共感いたしております」にする。
言葉は丁寧になっても、伝わる中身は増えていません。
こうした水増しは、読み手にすぐ見抜かれます。
面接で「その魅力について、具体的に教えてください」と聞かれた瞬間、書いた本人が言葉に詰まることになります。
書類の上でだけ整った文章は、その先で必ず足元をすくいます。
足すべきは言葉の量ではなく、場面です。
いつ、どこで、何を見て、何を感じたか。
この4つのうち1つでも入ると、文章は自然に長くなり、しかも薄まりません。
この判定ツールを作るとき、AIの文章と人間の文章を何十本も読み比べました。
AIに「もっと長くして」と頼むと、たいてい返ってくるのは、抽象語と修飾語が増えただけの文章でした。
文字数は指定に近づいても、中身の手ざわりはむしろ薄くなっていく。
これは人が同じことをしてしまうときも、まったく同じ現象です。
場面を足すというのは、たとえばこういうことです。
Before例は、言葉を足しても、結局同じ一文の言い換えにしかなりません。
After例は、見た場面をそのまま書くだけで、文字数は自然に増え、しかも他の誰にも書けない一文になっています。
埋まらないと感じたら、まず思い出すべきは、どこで何を見たかという記憶のほうです。
逆に、書き終えてみたら文字数がオーバーしていた、ということもよくあります。
「せっかく書いたのに、どこを削ればいいのか分からない」
そう感じて、結局最初から書き直してしまう人も少なくありません。
削るときに大事なのは、思いついた順に削るのではなく、優先順位を決めてから手をつけることです。
最初に削ってよいのは、どの学校にも当てはまる一般論です。
「教育は将来にとって重要だ」というような文は、その学校を選んだ理由には一切なっていません。
思い切って削っても、志望理由書としての中身は減りません。
次に削ってよいのは、同じ内容の言い直しです。
最初の一文で言ったことを、別の言葉でもう一度説明している箇所は、たいてい1つに絞れます。
その次に見るのは、修飾語です。
「大変」「非常に」「心から」といった言葉は、削っても文の意味はほとんど変わりません。
丁寧さを保ちたい気持ちは分かりますが、文字数が足りているときにだけ使う余裕、くらいに考えておくと判断しやすくなります。
最後まで残しておきたいのが、場面の細部です。
ここまで削ってきた分、最後に残るのは、その人にしか書けない一文のはずです。
削る前と削ったあとを、並べてみるとこうなります。
Before例は、一般論と修飾語で文字数を稼いでいるだけで、場面が最後の一文にしか残っていません。
After例は、一般論と言い直しを削った分、場面の描写に文字数を回せています。
どこまで削っていいか、どこから先は削ってはいけないか。
その境目を、次の章で具体的に見ていきます。
削って文字数は収まったのに、読み返すと何かが物足りない。
そう感じるときは、削ってはいけない部分まで削ってしまっている可能性があります。
削ってはいけないものは、大きく3つに整理できます。
まず、具体的な場面。
いつ、どこで、何を見て、何を感じたかという部分は、文章の骨格そのものです。
次に、志望校とのつながり。
その場面が、なぜこの学校を選ぶ理由になるのか、という一文が抜けると、ただの思い出話で終わってしまいます。
そして、これからやりたいこと。
場面だけで終わり、その先にどうつながるのかが書かれていないと、読み手は「それで、この先どうしたいのか」という疑問を抱えたまま文章を読み終えることになります。
たとえば、こんな夜がある。
文字数を削っているうちに、勢いで場面の一文まで消してしまい、読み返して初めて「あ、これがないと伝わらない」と気づく。
慌てて元の文章を開き直し、消した一文だけを戻す。
そんな作業を、締め切り前の机で何度も繰り返している人は、決して少なくありません。
削って収まったはずなのに物足りない、と感じたときは失敗ではありません。
むしろ、残すべき部分が何かを、体で覚え始めている途中です。
足す作業も削る作業も終えたら、最後にもう一度、通しで読み返す時間を作ってください。
書いている最中は近すぎて気づけないことが、少し時間を置くと見えてきます。
まず試したいのが、声に出して読むことです。
黙読では気づかない語尾のクセや、息継ぎのできない長い一文が、声に出すとはっきり分かります。
できれば、一晩か半日、時間を空けてから読み返してみてください。
書いた直後と、時間を置いたあとでは、同じ文章でも見え方が変わります。
最後に、場面の部分と抽象的な言葉の部分の比率を、ざっくりで構わないので見てみてください。
これらは、自分だけで見ていると、意外と見落とします。
書いた本人にとっては当たり前すぎて、逆に目が滑ってしまう部分だからです。
そうした偏りを客観的に確認する方法として、赤ペン願書ラボの無料セルフチェックツールを使う方法もあります。
文章を貼り付けると、抽象語の密度や、場面の具体性が薄い箇所を確認できます。
このツールは、AIの利用を隠すための道具ではありません。
指摘された箇所に、実際にあった場面を足していくための、ただの手がかりです。
文字数カウンターの数字が、指定の範囲にきれいに収まった瞬間。
そこでようやく、画面の向こうにあった空白は、その人だけの一文で埋まっています。
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