中学受験で初めて志望理由書を書く保護者に向けて、構成の型・文字数配分の目安・場面の見つけ方から、よくある失敗の直し方までを順番に解説します。
中学受験の志望理由書は、家庭がその学校をどう理解し、なぜ選んだのかを言葉にする書類です。
点数や偏差値では測れない部分を伝えるための、ほぼ唯一の機会でもあります。
学校側は、この書類を通じて、家庭の教育方針と学校の方針がどれくらい重なっているかを見ています。
上手な文章を書くことより、その重なりが具体的に伝わることのほうが大切です。
初めて書く保護者にとっては、何から手をつければよいのか分かりにくい書類でもあります。
願書に添える基本情報とは違い、志望理由書には家庭の考えや子どもの様子を自由に書く余地があります。
自由度が高いぶん、構成を決めないまま書き始めると、内容がまとまらないまま文字数だけが増えていきがちです。
最初に役割を整理しておくと、何を書き、何を書かなくてよいかの判断がしやすくなります。
保護者が身構えてしまう理由の一つは、正解が決まっていないように見える書類だからです。
学校が知りたいことはある程度共通しているため、押さえるべき順番さえ分かれば、思っているより書き進めやすくなります。
塾によっては志望理由書の添削を行ってくれる場合もありますが、まずは家庭でどこに向かって書くのかを整理しておくと、添削もスムーズに進みます。
この記事では、初めて志望理由書に取り組む家庭向けに、構成の型から文字数配分、場面の見つけ方、よくある失敗の直し方までを順番に見ていきます。
志望理由書の型として使いやすいのが、きっかけ・共感・今後の3つの流れです。
きっかけでは、その学校を知った経緯や、実際に足を運んだ場面を書きます。
説明会や学校見学、文化祭など、家庭が実際に体験した出来事から始めると、書き出しがスムーズになります。
共感では、その体験を通じて何に心を動かされたのかを、できるだけ具体的な場面とともに書きます。
学校の方針そのものを説明するのではなく、その方針が実際にどんな場面として表れていたかを描くのがポイントです。
今後では、入学後にどんな学校生活を送りたいか、家庭としてどう支えていきたいかを短くまとめます。
ここは長く書きすぎず、きっかけと共感で書いた内容とつながるように締めくくると、全体に一貫性が出ます。
3つの流れは、きっかけで見た場面が共感の理由になり、共感の内容が今後の展望につながる、という順番でつながっています。
順番を大きく入れ替えると、話の流れが分かりにくくなることがあるため、まずはこの型のまま書いてみることをおすすめします。
慣れてきたら、家庭の状況に合わせて多少前後させても構いません。
きっかけの場面は、パンフレットやウェブサイトの情報だけでなく、実際に足を運んだときの記憶から選ぶと、文章に厚みが出ます。
共感のパートでは、方針への納得だけでなく、そこに至るまでに家庭内でどんな会話があったかを添えると、家庭ならではの視点が伝わりやすくなります。
今後のパートは、抱負を並べて書こうとせず、共感した場面から自然に続く一文で十分にまとまります。
構成の型が決まったら、次に文字数の配分を考えます。
目安として、きっかけ・共感・今後の比率を2:3:2で考えると、バランスが取りやすくなります。
共感の部分にいちばん多くの文字数を割くのは、学校との重なりを具体的に伝えるパートだからです。
以下は、全体を600字と800字で書く場合の目安です。
| 全体の文字数 | きっかけ | 共感 | 今後 |
|---|---|---|---|
| 600字 | 約170字 | 約260字 | 約170字 |
| 800字 | 約230字 | 約340字 | 約230字 |
これはあくまで目安であり、学校が指定する形式や項目立てによって調整して構いません。
きっかけが短くても、共感の場面がしっかり描けていれば十分に伝わります。
逆に、共感の部分が抽象的な言葉だけで終わってしまうと、全体の文字数を使い切っていても内容が薄く感じられてしまいます。
書き始める前に、この比率をメモしておくと、どこかの項目に文字数を使いすぎて他が書けなくなる、という事態を避けやすくなります。
一度書き終えたあと、実際の文字数がこの比率からどれくらいずれているかを確認してみるのもよい方法です。
共感の部分を具体的に書くためには、説明会や学校見学の場でのメモが役に立ちます。
その場で感じたことをすべて覚えておくのは難しいため、気づいたことをその都度メモしておく習慣がおすすめです。
メモしておくとよいものの1つ目は、子どもが立ち止まった場所です。
図書室の前で足を止めた、理科室の展示に見入っていた、といった様子は、あとで共感の場面を書くときの材料になります。
2つ目は、子どもが見学中に言った一言です。
「ここでこんなことがしたい」「この教室、好きかも」といった何気ない言葉は、大人が用意した感想よりも実感がこもっています。
3つ目は、先生や在校生が話していた言葉です。
説明会での説明そのものよりも、質問に答えてくれた在校生の一言や、廊下ですれ違った先生のちょっとした対応のほうが、印象に残ることも少なくありません。
メモは箇条書きで十分で、その場で感じたことを短く残しておけば、あとで文章にするときの手がかりになります。
帰宅後、その日のうちに家族で振り返る時間を持つと、メモに残らなかった細かい記憶も思い出しやすくなります。
複数回見学に行った場合は、回ごとにメモを分けておくと、どの体験をどの場面に使うかを選びやすくなります。
メモを取る際は、専用のノートやスマートフォンのメモ機能など、決まった置き場所を1つ用意しておくと、あとで見返すときに散らばらずに済みます。
説明会で配布された資料に、気づいたことをその場で直接書き込んでおくのも一つの方法です。
文化祭では、在校生が案内してくれる場面や、展示や発表を準備してきた様子など、日常の学校生活がふとした瞬間に垣間見えることがあります。
こうしたメモをいくつか並べてみると、その中から共感のパートに使いやすい場面が自然と絞られてきます。
初めて志望理由書を書くときによく見られる失敗をいくつか紹介します。
1つ目は、学校の教育方針をそのまま言葉として引用してしまうパターンです。
学校案内やホームページの言葉をなぞるだけでは、なぜその方針に共感したのかが伝わりません。
2つ目は、共感の理由が抽象的な感想だけで終わってしまうパターンです。
「魅力を感じた」「素晴らしいと思った」だけでは、他のどの家庭の文章にも当てはまってしまいます。
Before例は、言葉としては整っていますが、実際にどの場面を見て感じたのかが読み手に伝わりません。
After例は、見学中の具体的な場面を1つ入れるだけで、その家庭にしか書けない文章に変わっています。
特別な出来事を用意する必要はなく、見学中に実際にあった小さな場面を思い出すことが、いちばんの近道です。
書き終えた文章にこうした抽象的な表現が残っていないか、自分だけで判断しにくいときは、こうした観点を確認できるチェックを使う方法もあります。
志望理由書を書き終えたら、提出前に一度、時間を置いてから読み返すことをおすすめします。
書いている最中は気づきにくい抽象的な表現も、少し時間を置くと見つけやすくなります。
確認したいのは、次の5点です。
時間が許すなら、数日空けてからもう一度読み返すと、最初は気づかなかった単調さに気づけることがあります。
チェックする際は、一度にすべての項目を見ようとせず、1つずつ順番に確認していくと、見落としを減らせます。
提出直前になって慌てて直すよりも、余裕を持ったスケジュールで、書く→見直す→直すという工程を数回繰り返すほうが、文章はまとまりやすくなります。
仕上げの段階で、自分では気づきにくい抽象的な表現や偏りを客観的に確認しておくと、提出前の安心材料になります。
志望理由書は、飾った言葉を積み重ねるための書類ではなく、家庭が学校とどう向き合ってきたかを伝えるための書類です。
実際に足を運んで感じたことを、そのままの形で言葉にしていく作業を、焦らず進めていってください。
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