小学校受験の願書で、志望理由欄が200字前後の小さな枠しかないとき、何を先に削り何を最後まで残すかを、下書きを絞る実例つきで整理しました。入りきらなかった話の行き先と、手書きの枠の確かめ方も。
日曜の昼、願書の用紙を机に広げて、志望理由の欄に定規を当ててみた。
数行。
文字の大きさを考えると、200字に届くかどうか、というところ。
手元の下書きは、600字ある。
説明会で感じたこと、家庭で大切にしていること、子どものこと。
どれも削りたくない。
「この小さな枠で、何を伝えろというのだろう」
ペンを置いて、用紙と下書きを見比べる。
三分の一にしなければならないという事実が、じわじわと重くなってきます。
けれど、先に言っておきたいことがあります。
欄が小さいこと自体は、欠点ではありません。
小さな枠は、「全部を書いてください」ではなく、「ひとつ選んでください」という用紙からの注文だと受け取ることもできます。
600字を、そのまま三分の一に縮める必要はありません。
縮めるのではなく、選び直す。
そう考えると、作業の向きが少し変わります。
様式や字数、手書きかWeb入力かは、学校ごと、年ごとに違います。
具体的な枠の大きさや指定は、募集要項や学校からの案内で確かめてください。
ここでは、200字前後の小さな欄を前提に、何を残して何を手放すかを順に見ていきます。
200字という長さは、思ったより入りません。
一文が40字前後なら、並べられるのは5文ほどです。
ここに、説明会の感想も、家庭の方針も、子どもの長所も、将来の願いも入れようとすると、どれも一文ずつの浅い話になります。
全部入れると、全部が薄まる。
200字の枠に入るのは、せいぜい「わが子のある日の場面ひとつ」と、「その場面がこの学校のどこと重なるかを示す一文」くらい。
この見立てで考えると、判断が楽になります。
この判定ツールを作るとき、AIが書いた文と人が書いた文を読み比べました。
AIの文は、あれもこれもと均等に盛り込んでいて、どこにも体温がないものが多く見えました。
人が書いた文で印象に残るのは、たいてい、ひとつの場面にだけ時間をかけている文のほうでした。
枠が小さいときほど、この差ははっきり出ます。
場面を決めるときの目安は、次のとおりです。
大きな出来事は要りません。
公園で順番を譲った、朝に自分で靴をそろえた、そのくらいの場面で足ります。
では、600字の下書きから何を外すか。
削る順番を決めておくと、迷いが減ります。
最初に外したいのは、学校案内やホームページにある言葉の言い換えです。
教育理念を引用して「深く共感いたしました」と続ける文は、丁寧に書けるぶん、字数をいちばん食います。
学校の側は、自分たちの言葉をすでに知っています。
その言葉を返されても、その家庭ならではの情報は何も増えません。
次に、どの家庭にも当てはまる一般論です。
「教育は子どもの将来にとって大切だと考えております」のような文は、削っても志望理由としての中身は減りません。
それから、「とても」「非常に」「大変」といった飾りの言葉。
最後に、同じことの言い直し。
最初の一文で言ったことを、別の言葉でもう一度説明している箇所は、たいてい一文に絞れます。
「せっかく書いたのに、捨てるのはもったいない」
そう感じるのは自然です。
ただ、ここで外すのは、書いた努力ではなく、200字の中で場所を取るだけになっている言葉です。
実際に絞ると、こうなります。
下の例は、こちらで作った創作例で、実在の家庭の文章ではありません。
Before例は、600字ある下書きの書き出しです。
After例は、下書き全体を絞り直した、欄に書く全文です。
Before例は、理念の引用と一般論で場所を使い、場面は4文目に小さく出てくるだけ。
この5文だけで180字を超えていて、まだ下書きの三分の一にも来ていません。
After例は、場面を先頭に置き、学校公開で見たものと結ぶ一文を添えました。
全部で170字ほど。
それでも、Before例になかった「子どもが何と言ったか」が入っています。
削っていくと、最後にふたつだけ残ります。
ひとつは、わが子のその日の場面。
数字や固有の言葉がひとつでもあると、一気に具体的になります。
「先にどうぞ」という言葉、「3回」「毎朝」といった数、「青い長靴」のような物の名前。
そういう細部が、他の家庭には書けない一文をつくります。
もうひとつは、その場面が学校のどこに重なるかを示す一文です。
説明会や学校公開で見た光景でも、学校案内で読んだ活動でも構いません。
ただし、学校の言葉をなぞるのではなく、自分の目で見たものや、実際に知ったことで結びます。
この一文が抜けると、場面は思い出話で終わります。
逆に場面が抜けると、重なりの一文は、どの家庭でも書ける文に戻ってしまいます。
迷ったら、削り終えた文章を読み返して、次の二点だけ確かめてください。
その場面は、この子の話だと、家族が読んでも分かるか。
その場面と学校のつながりが、一文で言い切れているか。
どちらも「はい」なら、あとは語尾の好みの範囲です。
200字に絞る作業で、いちばん胸が痛むのは、削った話を手放すときかもしれません。
説明会で感じたこと、家庭で続けていること、子どもの長所。
どれも本当のことで、嘘ではありません。
けれど、入りきらなかった話は、捨てなくて構いません。
回す先があります。
願書の様式に、家庭の教育方針、子どもの様子、備考といった別の欄があるなら、削った材料はそこで使えます。
欄がなければ、面接で話す材料として手元に残しておけます。
ここで大事なのは、同じ話をふたつの欄に書かないことです。
志望理由で使った場面は志望理由に、削った別の場面は別の欄に。
どの欄に何を置くかは、学校ごとに様式が違うので、募集要項の記入上の注意を確かめながら決めてください。
ここでは、削った分には行き先がある、とだけ覚えておけば十分です。
そう思えると、削る手が止まりにくくなります。
「ぜんぶ入れられなかった」ではなく、「いちばんいい一場面を選べた」。
200字の枠は、そう言い換えられる作業でもあります。
最後に、実際の枠に合わせる作業です。
手書きの願書では、「何字」より「何行」のほうが、実際の感覚に近くなります。
罫線の幅、自分の字の大きさ、枠の余白。
同じ200字でも、字が大きい人と小さい人で、行の埋まり方は変わります。
下書きを、パソコンの文字数カウンターだけで確かめていると、清書のときに「あれ、枠から出る」ということも起こり得ます。
そこで、枠と同じ行数の下書き用紙を作って、同じくらいの字の大きさで一度書いてみる方法があります。
用紙をコピーして使っても、定規で同じ行数の枠を引いても構いません。
実際に鉛筆で書いてみると、行末の余り方や、一行に収まらない長い一文が、はっきり見えてきます。
Web出願で入力する学校なら、画面のカウンターで字数を数えながら確かめます。
字数の数え方や、改行・空白を字数に含めるかどうかは、学校の入力画面や案内の指示に従ってください。
たとえば、こんな休日の午後。
コピーした用紙に鉛筆で書いてみると、最後の一行だけが枠に収まらない。
声に出して読みながら、「と考えております」を「と思っています」に変えてみる。
ぴたりと収まったところで、読み返すと、最初に枠を測ったときの重さは、もう残っていない。
文の内容が、その子の話になっているかを自分たちで見極めにくいときは、赤ペン願書ラボの無料セルフチェックツールに文章を貼り付けてみてください。
抽象的な言葉や、型どおりの言い回しが続いている箇所に赤ペンが入り、言い換えのヒントが出ます。
字数を数えたり、どこを削るか決めたりするツールではありません。
このツールは、AIの利用を隠すための道具でもありません。
200字に残した言葉が、その家庭にしか書けない言葉になっているかを確かめるための、ただの手がかりです。
定規を当てたあの小さな欄に、いま、ひとつの場面が入っている。
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