小学校受験で国立小と私立小を併願するとき、同じ家庭の話を願書でどう書き分けるかを整理しました。成り立ちと記入欄の違い、核の場面は残して学校に重ねる一文を替える方法、2通を読み比べて面接でも同じ子の話になるかを確かめるところまで。
私立小の願書の下書きが、やっと仕上がった夜。
ほっとして、次は国立小の用紙を広げる。
志望理由の欄、あるいはそれに近い欄の前で、さっき仕上げた文章を写そうとして、手が止まる。
写してみる。
読み返す。
どこか、座りが悪い。
「同じ子の話なのだから、そのまま使えるはず」
そう思って書き写したのに、文の中で「校風」「建学の精神」という言葉だけが、浮いて見えてくる。
この違和感には、理由があります。
国立小と私立小は、学校の成り立ちも、願書に求めている中身も、同じではないからです。
とはいえ、まるごと別の文を一から書く必要はありません。
家庭の話は、ひとつでかまいません。
取り替えるのは、その話を学校にどう重ねるかの部分だけです。
なお、国立と私立のどちらの学校にも当てはまる断定はできません。
様式も欄の大きさも、学校ごと、年ごとに違います。
この記事は「一般にそう言われている」傾向をもとにした整理なので、具体的な点は、必ず募集要項と実物の用紙で確かめてください。
私立小は、学校ごとに建学の精神や教育方針を持っています。
願書は、その考え方に、その家庭の考え方が重なるかどうかを知るための入り口のひとつ、と説明されることが多い書類です。
だから私立向けの志望理由では、「この学校の考え方に、わが家のこんな場面が重なる」という書き方が筋道としてつながります。
一方、国立大学の附属小学校は、一般に、教育の研究や、教育実習の場としての役割を持つ学校と説明されています。
授業を研究の対象として公開したり、実習生が教室に入ったりする。
そうした学校のあり方に、家庭がどう向き合えるか。
こちらは、校風への共感とは別の角度の問いになります。
ここまでは、あくまで一般的な説明です。
学校ごとに、何を大切にしているかは違います。
どの学校も同じだと決めつけず、公式の案内や学校説明会の資料で、その学校がどんな言葉で自分たちを説明しているかを見てください。
この判定ツールを作るとき、AIが書いた文と人が書いた文を読み比べました。
AIの文で目についたのは、宛先の学校を入れ替えてもそのまま通じる書き出しです。
「校風に共感し」で始まる一文は、私立にも国立にも貼れてしまう。
どこにでも貼れる文は、どの学校に宛てて書いたのかが見えない文でもあります。
使い回しを避けたいのは、手抜きを責めたいからではありません。
学校ごとに重ねる相手が違うのに、重ね方が同じだと、文が宙に浮くからです。
願書の様式も、学校ごとに違います。
一般的な傾向としては、私立は志望理由や家庭の教育方針を書く欄を、ゆったり取っている学校が多いと言われます。
国立は記入欄が少なめで、志望理由を書く欄がない、あるいは小さい学校もある、という説明を見かけます。
ただし、これは傾向の話です。
私立でも欄が小さい学校はありますし、国立でも書く欄がしっかりある年があるかもしれません。
抽選を実施する学校や、通学区域を定めている学校もあります。
そうした制度面の違いも、募集要項に書かれているはずです。
だから、下書きを書き始める前に、次のことを手元で確かめるのがおすすめです。
欄が大きい用紙なら、場面をていねいに書き、学校との重なりにも2〜3文を使えます。
欄が小さい用紙では、場面はひとつ、重なりは一文まで絞ることになる。
志望理由の欄そのものがない用紙なら、同じ話は面接で口にする材料として手元に置いておきます。
欄の形が違えば、書ける量も、置ける話の数も変わります。
「入りきらないなら、削ればいい」
そう考えて私立用の文章を端から削っていくと、最後に残るのは、たいてい私立に向けた結びの一文のほうです。
残したいのは逆で、子どもの場面のほう。
結びの一文は、削るのではなく取り替えます。
具体的に見てみます。
家庭で、毎朝ミニトマトの鉢に水をやっている子がいるとします。
先週は、実がほんの少し赤くなっているのに気づいて、「きのうより赤い」と報告してくれた。
この場面は、私立向けの志望理由でも、国立向けの志望理由でも、使えます。
核の場面は同じでかまいません。
変えるのは、その場面を学校のどこに結ぶか、という一文です。
私立向けなら、たとえばこう結べます。
学校説明会で聞いた、日々の生活の中で気づく心を大切にするという方針と、この場面を重ねる。
これを、国立の願書にそのまま写すと、どうなるか。
次の例は、創作です。
Beforeは、私立向けの「校風への共感」と「方針が重なる」という結び方を、そのまま持ってきた形です。
宛先を別の学校に入れ替えても、この3行はそのまま通じてしまいます。
ミニトマトの場面も、「気づく心を持った子」というまとめの言葉に置き換わって、朝の様子が見えなくなりました。
Afterは、核の場面の書き方を少し整えたうえで、重ねる相手を、学校の役割に替えました。
研究授業や実習生がいる、という学校の姿を知っているうえで、家庭がどう関わるかを書いています。
この例の学校像は、あくまで創作例のために置いた一般的な像です。
実際に書くときは、その学校の公式な案内に書かれている言葉に合わせて、どこに重ねるかを決めてください。
学校の役割に触れるとき、案内の言葉を引用して「共感しました」と続ける形は、私は勧めません。
案内に書いてあることは、学校がいちばんよく知っています。
書く場所を使うなら、その役割を知ったうえで、家庭にどんな場面があるのか。
そちらは、その家庭にしか書けません。
私立と国立の2通ができたら、並べて置いて、読み比べます。
見るのは、文の上手さではありません。
核の場面が、同じ子の話として、ぶれていないかどうか。
たとえば、こんな夜。
机の上に、2通の下書きが並んでいる。
片方では、毎朝水をやっていると書いてあり、もう片方では、休日にだけ水をやると書いてある。
書いたときは、それぞれの文の流れに合わせて、少しずつ言い方を変えただけだった。
けれど並べると、同じ子のはずなのに、別の習慣を持った子に見えてくる。
併願では、面接で両方の学校から、似たことを聞かれるかもしれません。
そのとき2通に書いたことが食い違っていると、どちらの話をすればよいのか、答える側が迷うことになります。
並べて読むときは、次の点を確かめてください。
核の場面の事実(いつ、何を、どのくらい)が、2通で同じになっているか。
子どもが口にした言葉が、同じ言葉のままで書かれているか。
学校に重ねる一文だけが違っていて、それ以外が別人にならないか。
この3点がそろっていれば、2通は使い回しでもなく、別人の話でもない状態です。
文章を見直すときに、どこがAIの定型っぽく読まれやすいかを確かめたいなら、赤ペン願書ラボの無料セルフチェックツールが使えます。
貼った文章の中から、AIが書いた文によく出る言い回し(型どおりの表現、抽象的な言葉の多さ、文末の単調さなど)に赤ペンを入れて、点数を出すツールです。
学校ごとに合っているかどうかや、国立向け・私立向けの書き分けを判定する機能はありません。
合格を約束するものでもありません。
AIの利用を隠すための道具でもなく、2通それぞれが、その家庭の言葉になっているかを見直すための手がかりです。
並べた2通の下書きの、どちらにもミニトマトの鉢が出てくる。
「きのうより赤い」のひと言も、同じまま。
違うのは、最後の一文だけ。
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