説明会や学校見学に参加できないまま志望理由書に向き合う保護者に向けて、学校を知る他の方法、資料や動画から材料を集めるコツ、家庭側から書き起こす手順までを順番に解説します。
学校説明会の予約サイトを開いたまま、画面を閉じた夜がある。
下の子が急に熱を出し、その日は結局家から出られなかった。
気づけば予約枠は埋まっていて、次の開催は数か月先だった。
「うちだけ、行けていない」
そう感じている保護者は、実は少なくありません。
きょうだいの体調、仕事の都合、住んでいる場所からの距離。
理由はいくつもあって、そのどれもが本人の努力ではどうにもならない事情です。
それでも、塾で「うちは見学に行ってきました」という話を耳にすると、焦りだけが募っていきます。
最初にはっきりさせておきたいのは、見学していないことそのものが、即座に不利になるわけではないという点です。
学校側が志望理由書で確かめているのは、参加実績ではなく、その家庭が学校をどれだけ理解し、なぜその学校を選んだのかという中身のほうです。
説明会に参加した家庭の文章に「見学で見た場面」が多く登場するのは、単にその家庭が使える材料をそこから得ているからにすぎません。
参加そのものが加点の対象になっているわけではない、という前提で考えると、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。
もちろん、学校を実際に訪れて得られる手がかりには独特の説得力があります。
その場でしか拾えない細部は確かにあります。
ただ、志望理由書に必要なのは学校に行った証拠ではなく、この学校を選んだ理由が具体的に書けているかどうかです。
材料の出どころが説明会であってもなくても、その家庭とその子どもにしか書けない内容になっていれば、文章としての説得力は成立します。
出どころではなく、中身。
この順番を間違えなければ、見学できていないという事実だけで書けなくなることはありません。
次の章では、説明会以外にどんな方法で学校を知ることができるのか、具体的に見ていきます。
説明会に行っていないと何も分からないままなんじゃないか、そう思い込んでしまう保護者は多いのですが、実際には学校を知る経路はいくつも存在します。
まず挙げられるのが、学校が発行しているパンフレットや学校案内です。
資料請求だけであれば、説明会の予約が埋まっていても対応してもらえる学校がほとんどです。
在校生や卒業生の声が掲載されているページには、学校の雰囲気を伝える具体的な言葉が意外と多く含まれています。
学校の公式ウェブサイトも、想像以上に情報量があります。
行事の様子を伝えるブログやニュース欄、部活動の活動報告など、更新頻度の高い学校であれば日々の様子がかなり細かく分かります。
最近は、オンライン説明会や動画配信という選択肢も広がっています。
リアルタイムで参加できなくても、後日アーカイブ動画が公開される学校や、資料請求時に紹介動画のURLを送ってくれる学校もあります。
生徒同士のやり取りや先生の話し方など、文章だけでは伝わらない部分を見ることができます。
学校のSNSアカウントも見逃せません。
日常の一コマを投稿している学校では、パンフレットには載らないような、ふとした瞬間の生徒の表情が写っていることがあります。
意外と頼りになるのが、身近な人からの情報です。
その学校の卒業生や在校生の保護者が知り合いにいれば、実際に通ってみてどうだったかを聞ける貴重な機会になります。
説明会以外にも公開されている行事、たとえば文化祭や体育祭は、説明会よりも予約が取りやすい場合があります。
一つの窓口にこだわらず、いくつもの窓口を並べてみると、意外と多くの手がかりが集まってきます。
たとえば、こんな週末がある。
説明会には申し込めなかったけれど、学校のホームページで見つけた文化祭の動画を、子どもと一緒にリビングで見る。
画面の中の生徒たちの様子に、子どもがぽつりと何かをつぶやく瞬間。
その一言が、志望理由書の材料になることがあります。
次の章では、こうした資料や動画、在校生の様子から、実際にどうやって書ける材料を見つけていくかを具体的に見ていきます。
材料集めで大切なのは、情報をたくさん集めることではなく、子どもの反応と結びつく場面を1つか2つ見つけることです。
情報量が多くても、子どもの反応が伴っていなければ、書いたときに他の家庭の文章と見分けがつかなくなってしまいます。
まずパンフレットや学校案内から探すときは、写真のキャプションだけでなく、在校生の声としてそのまま掲載されている短い文章に注目してみてください。
委員会活動で意見がぶつかったとき最後は自分たちで話し合って決めた、といった一文が載っていることがあります。
こうした言葉を読んだときに、子どもがどう反応するかを見ておくのがポイントです。
動画を見るときは、一度で終わらせず、子どもと一緒に見返す時間を作ることをおすすめします。
一度目は全体の雰囲気をつかむために、二度目は子どもが気になった場面を止めながら見る、という進め方をすると、子どもの言葉を拾いやすくなります。
「あ、これいいな」という何気ない一言をその場でメモしておくと、あとで文章にするときの材料になります。
在校生の様子は、動画やSNSの写真からも読み取れます。
文化祭の動画で、上級生が下級生に道具の使い方を教えている場面。
学校が特別に見せようとして撮ったものではないぶん、かえって日常の空気が表れていることがあります。
卒業生や在校生の保護者に話を聞く場合は、漠然と聞くよりも、先生と生徒の距離感はどうだったか、行事のとき子どもはどんな様子だったか、といった具体的な質問を用意しておくほうが答えを引き出しやすくなります。
この判定ツールを作るとき、AIの文章と人間の文章を何十本も並べて読み比べました。
情報の出どころが説明会であっても資料であっても、本人が実際に見聞きした場面が入っている文章は、驚くほどはっきりと見分けがつきます。
資料をなぞっただけの言葉には、誰が書いても同じになりそうな匂いが残るものです。
集めた材料は、次のような形で整理しておくと書き起こしやすくなります。
| 情報源 | 得られやすい材料 |
|---|---|
| パンフレット・学校案内 | 在校生の声、行事の説明文 |
| 学校ウェブサイト・ブログ | 日々の活動記録、部活動の報告 |
| 紹介動画・行事の配信映像 | 生徒同士のやり取り、先生の話し方 |
| SNS公式アカウント | 日常の一コマ、行事の裏側 |
| 卒業生・在校生の保護者 | 通ってみて分かる雰囲気、先生との距離感 |
Before例は、どの学校のホームページを見ても書けてしまう感想で終わっています。
After例は、動画の中の具体的な場面と、それを見た子どもの反応をセットで書くことで、その家庭にしか書けない一文に変わっています。
説明会に行かなくても、この組み合わせは十分に作ることができます。
材料をいくら集めても、これで足りているんだろうかという不安が消えないこともあります。
そういうときは、学校側の場面からではなく、家庭側の理由から書き起こす順番を試してみてください。
説明会に参加した家庭の多くは、見学でこんな場面を見た、だから惹かれた、という順番で文章を組み立てます。
けれど、うちの子にはこういう様子がある、それが学校のこういう部分と重なると感じた、という家庭発の順番で書くこともできます。
まずやってみたいのが、わが子の普段の様子を思い出すことです。
何かに夢中になっているとき、どんな顔をしているか。
得意なことより先に、時間を忘れて没頭していることを思い出すほうが、案外書きやすいものです。
次に、その様子と重なりそうな部分を、集めた資料や動画の中から探します。
学校の方針に子どもを合わせにいくのではなく、子どもの様子に近い場面を学校の情報の中から見つけにいく、という向きで進めると、無理のない文章になります。
「こんな材料で、本当に大丈夫なんだろうか」
そう感じる方もいるはずです。
けれど、学校側の場面と家庭側の様子、どちらから書き始めても、最終的に両者が重なっていることが伝われば、それで役割を果たしています。
Before例は、学校案内に書かれていそうな言葉をそのまま借りているだけの文章です。
After例は、わが子の日常の様子を先に置き、そのあとで学校の情報とのつながりを添えることで、説明会に行っていなくても書ける文章になっています。
書く順番を変えるだけで、手元にある材料の使い方は大きく変わります。
足りないと感じたときほど、学校側からではなく、わが子側から一度書き始めてみてください。
出願までにまだ時間があり、参加できる機会が残っている場合は、無理のない範囲で押さえておくと材料の幅が広がります。
すべてに行く必要はなく、1回でも参加できれば、資料だけでは埋められない実感が補われます。
これらは、必ずしもすべてこなす必要はありません。
どれか1つでも実現できれば、具体的な場面が1つ増えます。
逆に、どれも叶わなかったとしても、ここまで見てきた方法だけで、志望理由書は十分に書き上げられます。
大切なのは、説明会に行けたかどうかを基準に自分たちを評価しないことです。
基準になるのは、いま手元にある材料から、わが子の様子が伝わる文章を組み立てられているかどうか、それだけです。
書き終えた文章に、具体的な場面と子どもの反応がセットで入っているか、家族以外の人に読んでもらって確かめておくと安心材料になります。
予約できなかった説明会の画面を、もう一度開くことはないかもしれません。
それでも、リビングで一緒に見た動画の中の一場面から、志望理由書はちゃんと書き始められます。
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