AO入試(総合型選抜)の志望理由書でAIをどう使うか迷う受験生に向けて、大学ごとの方針の確認方法、AIの下書きを自分の経験に置き換える手順、面接を見据えた書き方までを解説します。
深夜の自室。
志望理由書の下書き画面と、開きっぱなしのAIのチャット画面。
カーソルは点滅したまま、進まない。
「これ、このまま出していいのかな」。
そんな声が、頭のどこかで鳴っている人は少なくないはずです。
AO入試、いわゆる総合型選抜は、学力試験の点数だけでは測れない部分を見るための入試です。
学部でどんな学びをしたいか。
そのために自分が何をしてきたか。
これが書類と面接を通して問われます。
一般選抜のように、志望理由書だけを単独で評価して終わり、という仕組みではありません。
提出書類の内容は、そのあとの面接で必ず参照されます。
書類と面接はセット。
この前提を最初に押さえておくと、書き方の判断がぐっとしやすくなります。
評価の対象になりやすいのは、探究活動や部活動、委員会活動、アルバイトやボランティアといった、学校の外と内の両方での経験です。
特別な実績や表彰がなければ書けない、というものでもありません。
日々の活動の中で何を考え、どう行動したか。
その過程こそが見られています。
大学によっては、志望理由書のほかに活動報告書や自己推薦書が加わることもあります。
呼び方や様式は大学ごとに違っても、聞かれていることの根っこは共通しています。
学力試験のように正解が決まっているわけではないため、どこを見られているのか掴みにくいと感じる人も多いはずです。
掴みにくいからこそ、志望する学部の学びと自分がやってきたことのつながりを、自分の言葉で説明できる状態にしておく。
これが軸になります。
就職活動のエントリーシートと似た文脈で検索する人もいますが、AO入試の評価はその場限りで終わりません。
入学後の学びに直結する点が、大きく違います。
ここから、AIを活用しながらもこの軸をぶらさずに書き上げる方法を、順番に見ていきます。
AIを使う一番のメリットは、構成の型を素早く作れることです。
何から書き始めればよいか分からない状態から、章立てや流れの案をすぐに得られる。
時間の限られた受験生にとって、これは素直に助かります。
考えを言葉にする作業のスピードが上がるのも大きい。
頭の中にある漠然とした思いを、いったん文章の形にしてもらう。
そこから直す作業に集中できます。
一人で抱え込まず、壁打ち相手として使えることも利点です。
「この経験は志望理由になり得るか」「別の角度から書けないか」。
そんな問いを投げかけながら、考えを整理していけます。
一方で、注意も必要です。
AI利用について、大学ごとに方針が分かれているのが今の状況です。
募集要項に、志望理由書は本人が作成したものであることを求める記載がある大学もあります。
ツールの利用そのものに、特に言及のない大学も多くあります。
どちらの姿勢を取るかは大学によって異なり、一律の答えはありません。
思い込みで判断せず、自分が受ける大学の募集要項や、出願に関する注意事項を実際に確認する。
これが最初にやるべき作業です。
記載があいまいで判断に迷うなら、大学の入試窓口に直接問い合わせて確認しておくと安心です。
オープンキャンパスの相談ブースや、出願に関するよくある質問のページも確認先として使えます。
規定を確認したうえで、そのルールの範囲内でAIをどう使うかを考える。
順番を守ってください。
就活のエントリーシートでも同じ迷いを持つ人がいますが、判断の起点はいつも同じです。
自分が向き合っている相手の規定を、まず確かめること。
規定を確認できたら、次はAIの下書きを自分の経験に落とし込んでいく作業です。
最初にAIへ「志望理由書を書いて」とだけ頼むと、出てくる文章はどうしても一般的な言い回しの組み合わせになります。
学部の特色や社会的な意義について、もっともらしい言葉が並んでいても、そこに自分にしか書けない内容は含まれていません。
この判定ツールを作るとき、AIの文章と人間の文章を何十本も並べて読み比べました。
そこで痛感したのは、AIの下書き自体が悪いわけではない、ということでした。
問題は、それを最終稿だと思い込んでしまうことのほうにあります。
まずはこの一般的な下書きを、たたき台として使います。
文章の中から、抽象的な言葉になっている部分を探します。
「探究心を持って取り組んできた」「多様な視点を大切にしてきた」。
こうした言葉が出てきたら、そこを具体的な場面に置き換えていきます。
置き換える材料になるのは、自分が実際に取り組んできた探究活動や部活動、委員会活動、日々の課題への向き合い方です。
何をきっかけに始め、途中でどんな壁にぶつかり、どう乗り越えたのか。
あるいは乗り越えられずに、何を学んだのか。
具体的に思い出していきます。
「そんな経験はない」と感じる場合もあるはずです。
その場合は、特別な出来事を探すのではなく、日常の中の小さな行動を振り返ってみてください。
授業のレポートで工夫した点。
係活動や当番で気づいたこと。
友人や家族との会話で考えが変わった出来事。
どれも材料になります。
思い出した材料は、その場でスマートフォンのメモに短く残しておく。
あとで文章にするとき、探しやすくなります。
一つの経験を大きく見せようとするより、小さな経験をいくつか並べて、自分の関心がどこに向いているかを示す。
そのほうが説得力のある文章になることも少なくありません。
洗い出した材料をAIの下書きに戻し、「この場面を使って書き直してほしい」と具体的に頼み直す。
文章は、そこから自分の言葉に近づいていきます。
AO入試では、志望理由書の内容が、そのまま面接での質問につながります。
書類に書いたことは、必ず聞かれると考えておいたほうが安全です。
これは脅すための話ではありません。
書き方の基準をはっきりさせるための考え方です。
まず、盛らないこと。
実際よりも大きな実績のように見せたり、関わりの浅い活動を中心的な経験のように書いたりすると、面接で詳しい経緯を聞かれたときに答えに詰まりやすくなります。
それから、意外と見落としがちなのが、答えられないことは書かないという基準です。
AIが提案してきた言い回しの中に、自分では説明しきれない専門的な言葉や、実感の伴わない社会課題への言及が混ざっていることがあります。
かっこよく見える言葉でも、面接で「それはどういう意味で使いましたか」と聞かれて答えられないなら。
その部分は外すか、自分が理解できる言葉に書き直しておく必要があります。
これはAIの言葉に限らず、書籍やインターネットで見つけた言葉をそのまま取り入れた場合も同じです。
面接では、志望理由書に書いた出来事について、きっかけは何だったか、そのときどう感じたか、その後どう行動が変わったか。
こうした形で掘り下げられることがよくあります。
書類を書く段階で、こうした問いを自分自身に投げかけながら書いておく。
面接でも同じ流れで答えやすくなります。
逆に、書類の上でだけ整った文章になっていて、自分の中で理由づけができていない部分があると、面接でその箇所だけ言葉に詰まってしまうことがあります。
学校や塾で模擬面接の機会があれば、志望理由書の内容をもとに質問してもらい、答え方を練習しておくと安心材料になります。
このとき、答えを一字一句覚えて暗唱しようとする必要はありません。
覚えた言葉をなぞろうとすると、かえって思い出せなくなったときに詰まりやすくなる。
話す内容の骨組みだけを頭に置いておくくらいで十分です。
書き終えたら、家族や先生など第三者に読んでもらい、「ここは何を聞かれると思う」と質問を想定してもらう。
これも有効な確認方法です。
ここまでの作業を終えたら、提出前に一度、時間を置いてから読み返してください。
書いている最中には気づきにくい部分も、少し時間を空けると見えやすくなります。
提出直前になって慌てて直すより、書く、見直す、直すという工程を数回繰り返すほうが、内容はまとまりやすくなります。
特に確認しておきたいのは、次の5点です。
一度にすべてを見ようとせず、1つずつ順番に確認していくと、見落としを減らせます。
自分の文章を自分だけで客観的に見るのは、思っている以上に難しい作業です。
抽象的な言葉のクセや、語尾の偏りは、書いた本人ほど気づきにくいもの。
「もう何度も読んだから大丈夫」。
そう思ったときほど、実は見落としが残っていたりします。
そうした観点を確認する手段として、赤ペン願書ラボの無料セルフチェックツールを使う方法もあります。
書き終えた文章を貼り付けるだけで、抽象語の密度や語尾の偏りといった箇所が示され、直す優先順位をつけやすくなります。
このツールは、AI利用を隠したり、検出を回避したりするためのものではありません。
指摘された箇所に自分の経験を足し、自分の言葉に近づけていくための手がかりです。
点滅していたカーソルが、また動き出す。
そのための一手間だと思ってください。
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